安全をわかりやすく

リスクとは何か|評価・優先順位・管理まで使える考え方

リスクとは何かをわかりやすく解説
Kaito.Safety

まず始めに、「安全に気をつける」と言われても、具体的に何に注意すればよいのか迷うことはないでしょうか。

前回の記事では、安全とは「許容できないリスクがない状態」であると説明しました。

では、その前提となる「リスク」とは、どのように捉え、どう扱えばよいのでしょうか。

この記事では、

  • リスクの正体
  • リスクの評価方法
  • 優先順位の考え方
  • 現場での見方と管理方法

これらについて、実務に落とし込んで解説します。

リスクとは何か(定義の整理)

まず、リスクは一般的に、「望ましくない結果が起こる可能性」とされます。

さらにISO 31000では、目的に対する不確かさの影響と定義されています。

現場で扱う際には、これをシンプルに分解します。

つまり、リスク = 発生頻度 × 影響の大きさ

ここまでは、前回の記事の復讐です。

リスクは「評価」して初めて意味を持つ

ここからが、前回の記事との一番の違いです。

安全は“状態”でしたが、リスクは簡単に言うと、「評価して、優先順位を決めるための道具です。

リスクマトリクス(考え方)

リスクマトリクス

このように整理することで、どこから手を付けるべきか、何を後回しにできるかが明確になります。

  • 赤色:リスク対策が必要
  • 黄色:リスク低減効果で運用可能
  • 青色:運用可能

なお、普通の生活又は現場であれば、上記の3行×3行で構いませんが、例えば大規模システム・施設の場合は5行×5行を使用することが多いです。

同じリスクでも“意味”が違う

例えば、頻繁に起きる小さなミスや、めったに起きない重大事故など、どちらもリスクですが、対応は異なります。

  • 前者 → 現場改善・仕組みの問題
  • 後者 → 重大事故防止(優先)

👉 リスクは“種類”ではなく“重み”で判断することが重要です。

リスクはゼロにできない

現実の業務では、すべてのリスクを排除することは不可能です。

だからこそ重要になるのが、残留リスクという考え方です。

残留リスクという考え方

例えば、どれだけ対策を講じても、必ずリスクは残ります。

これを残留リスクといいます。

そこで重要なのは、「小さいから無視する」のではなく、管理し続けることです。

実務では、低リスクでも積み重なれば事故になるし、想定外の条件で顕在化するため、継続的な監視が必要です。

リスクを高める2つの要因

リスクの発生要因は大きく2つに分けられます。

① 機械・システム側の要因

  • 経年劣化
  • 故障
  • 設計不良

例:

  • 部品摩耗による機能低下
  • センサー異常

② 人間側の要因

  • 判断ミス
  • 操作ミス
  • 思い込み

例:

  • 誤操作
  • 確認不足

現場では「どちらか」ではなく「両方が重なる」ことでリスクが顕在化します。

(※ここはスイスチーズモデルにもつながるポイントです)

現場の具体例

ケース:整備作業での見落とし

  • 機械側:部品の劣化が進行
  • 人間側:点検項目の見落とし
  • 環境:作業時間が不足

→ 結果:不具合を見逃す

👉 単独では問題にならなくても、複合するとリスクが一気に顕在化します。

リスクマネジメントとは何か

リスクを扱うための基本が、リスクマネジメントです。

そこでISO 31000では、リスクについて指揮・統制するための調整された活動とされています。

実務での基本プロセス

① リスクの特定
② リスクの分析(頻度・影響)
③ リスクの評価(優先順位)
④ 対策の実施

これが基本の流れです。

リスクマネジメントの本質

リスクの考え方で重要なのはここです。

👉 リスクは「起きてから対応」では遅い

本来の目的は、顕在化する前に抑え込むことです。

つまり、リスクマネジメント=未来への備えです。

現場での観察ポイント

リスクを見抜くためには、次の視点が重要です。

① 想定されているか

  • 危険が洗い出されているか
  • 想定外が放置されていないか

② 評価されているか

  • 優先順位が明確か
  • 感覚で判断していないか

③ 対策が機能しているか

  • 形だけになっていないか
  • 現場と合っているか

④ 変化に追従しているか

  • 環境変化に対応しているか
  • 古い前提のままになっていないか

まとめ

最後に、リスクとは、発生頻度と影響の組み合わせで評価されるものです。

そして重要なのは、

  • リスクはゼロにできない
  • 残留リスクは必ず存在する
  • 優先順位をつけて管理する必要がある

という点です。

つまり、リスクとは「管理する対象」であり「判断の軸」であると言えます。

他の記事にて、リスクは連鎖して事故になる考え方(スイスチーズモデル)や、突発的に発生したリスクへ対応するための考え方(Safety-Ⅱ)、事故が生起した場合の根本原因分析から対策の手法まで、投稿しているので、参考にしてもらえたら嬉しいです。

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参考文献・基準

  • ISO 31000: Risk Management
  • ISO/IEC Guide 51
  • 河野龍太郎『ヒューマンエラーを防ぐ技術』
  • 日本ヒューマンファクター研究所『ヒューマンファクター ~安全な社会づくりをめざして~』

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ABOUT ME
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高リスク環境下における安全管理やヒューマンファクターに関する知見をもとに執筆しています。
高い安全性が求められる現場での実務経験をもとに、「ヒューマンエラー」や「事故の仕組み」をわかりやすく解説しています。 海上自衛隊にて回転翼機の運航に10年以上従事し、現在は民間にて防災ヘリ操縦士として救助活動等に携わっています。 これまで多くの事例や事故に触れる中で、「そもそも安全とは何か」という問いに強い関心を持つようになりました。 現場では、人のミスを個人の問題として扱うのではなく、 「なぜそのミスが起きたのか」 「どうすれば防げるのか」 という視点で、安全対策や再発防止に向き合ってきました。 このブログでは、そうした現場経験と学びをもとに、日常生活や仕事の中で役立つミスを防ぐための知識と安全の考え方を発信しています。
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