SafetyⅠとSafetyⅡの違いとは?安全の考え方をわかりやすく解説
「Safety-Ⅰ(セーフティワン)とSafety-Ⅱ(セーフティツー)って何?」
安全管理やヒューマンエラーについて学び始めると、この言葉を目にすることがあります。特に航空、医療、鉄道、消防、防災など、高い安全性が求められる分野では、近年Safety-Ⅱの考え方が注目されています。
これまでの記事では、
について解説してきました。これらの多くは、「事故やエラーを防ぐ」という考え方に基づいています。
実は、この考え方こそがSafety-Ⅰです。
一方で近年は、「なぜ普段はうまくいっているのか」という視点から安全を考えるSafety-Ⅱという考え方も重視されるようになりました。
この記事では、
- Safety-Ⅰとは何か
- Safety-Ⅱとは何か
- 現場ではどう活用すればよいのか
をわかりやすく解説します。



この記事はこんな人におすすめ
- Safety-ⅠとSafety-Ⅱの違いを知りたい方
- 安全管理を学び始めた方
- ヒューマンエラー対策を担当している方
- 安全教育の資料を作成している方
- 現場の安全文化について理解を深めたい方
まず最初にやること
Safety-ⅠとSafety-Ⅱを理解する前に、まず自分の職場を振り返ってみましょう。
次の質問に答えてみてください。
- 事故が起きたときだけ原因を考えていませんか?
- 普段うまくいっている理由を考えたことはありますか?
- ベテラン職員の工夫や判断を共有できていますか?
もし「事故が起きたときしか振り返らない」という場合は、Safety-Ⅰに偏っているかもしれません。
⭐ Safety-Ⅰとは何か
まず、Safety-Ⅰとは事故やエラーを未然に防ぐことによって安全を実現する考え方です。
これまで長い間、安全管理の中心となってきた考え方がこのSafety-Ⅰです。
Safety-Ⅰの特徴
Safety-Ⅰでは、
- 失敗に注目する(VTA分析)
- 原因を分析する(なぜなぜ分析)
- 再発防止を行う(m-SHELLモデル)
ことを重視します。
つまり、「なぜ事故が起きたのか」を追究する考え方です。
これは以前に記事で詳しく解説しているので、見てもらえると幸いです。



Safety-Ⅰの具体例
例えば、
- ヒヤリハット分析
- VTA分析
- なぜなぜ分析
- 手順書の改訂
- チェックリストの追加
などがあります。これまで本ブログで解説してきた
- ヒューマンファクター分析
- ヒューマンエラー対策
- 再発防止活動
の多くもSafety-Ⅰの考え方に基づいています。


Safety-Ⅰのメリット
再発防止に強い
事故が発生した原因を特定し、同じ失敗を防ぐことができます。
わかりやすい
問題点が明確になるため、対策を立てやすい特徴があります。
Safety-Ⅰの限界
しかし、Safety-Ⅰにも限界があります。
例えば、1年間で1万回の作業を行い、事故が1件だったとします。Safety-Ⅰは、その1件の失敗を分析します。しかし、残りの9,999回はなぜ成功したのでしょうか?実はそこに、安全を支える重要なヒントが隠れているかもしれません。
Safety-Ⅱとは何か
次に、Safety-Ⅱとはうまくいっていることに注目する安全の考え方です。
提唱者として知られているのが、レジリエンス・エンジニアリングの研究で有名なエリック・ホルナゲル氏です。
Safety-Ⅱの特徴
Safety-Ⅱでは、
- 成功に注目する
- なぜうまくいったかを分析する
- 良い実践を広げる
ことを重視します。
つまり、「なぜ普段は事故が起きていないのか」を考えるのです。
Safety-Ⅱの具体例
では、ここで3つのよくある事例を紹介します。
ベテラン職員の工夫
ベテラン職員はマニュアルには書かれていなくても、現場経験から危険を予測し、先回りして対応していることがあります。
チームでの声かけ
異常が起きる前に、チーム間の自然なコミュニケーションで危険を察知していることがあります。
状況への柔軟な適応
想定外の事態でも、現場が協力しながら対応し、事故を防いでいることがあります。
Safety-Ⅱのポイント
Safety-Ⅱでは、人を「エラーを起こす存在」ではなく、「状況に適応して安全を作り出す存在」として捉えます。
つまり、現場の対応力そのものが安全を支えているという考え方です。
⭐ Safety-ⅠとSafety-Ⅱの違い
Safety-ⅠとSafety-Ⅱの違いについてまとめます。
視点の違い
- Safety-Ⅰ:なぜ失敗したか
- Safety-Ⅱ:なぜ成功しているか
アプローチの違い
- Safety-Ⅰ:エラーを減らす
- Safety-Ⅱ:成功を増やす
安全の捉え方
- Safety-Ⅰ:事故がない状態
- Safety-Ⅱ:うまくいっている状態
⭐ 表でまとめると

現場ではこう考える
私は航空安全や組織安全を学ぶ中で、Safety-Ⅱの考え方に触れたとき、「確かにそうだ」と感じた経験があります。
例えば、事故やトラブルが起きると、どうしても失敗ばかりに目が向きます。しかし実際には、現場では毎日のように小さな異常や変化が発生しています。
それでも大事故にならないのは、誰かが気付き、誰かが声をかけ、誰かが工夫しているからです。
つまり、事故が起きなかった背景にも学ぶ価値があります。これはSafety-Ⅰだけでは見えにくい視点です。
具体例
事例① ヒヤリで止まったケース
作業中に違和感を覚えた職員が、「少し確認しましょう」と声をかけました。結果的に手順の誤りが見つかり、事故を未然に防ぐことができました。
Safety-Ⅰなら、事故が起きなかったため分析されないかもしれません。
Safety-Ⅱでは、この成功事例を学びの対象とします。
事例② ベテランの先読み
設備トラブルの兆候を察知し、早めに点検を実施した結果、重大な故障を防げたケースがあります。
これもSafety-Ⅱで注目される成功事例です。
よくある誤解
誤解① Safety-Ⅱは事故分析をしない
これは誤解です。Safety-Ⅱは事故分析を否定していません。
事故分析(Safety-Ⅰ)も重要です。その上で、成功事例からも学ぼうという考え方です。
誤解② Safety-Ⅱが新しくて優れている
Safety-ⅡはSafety-Ⅰを置き換えるものではありません。
どちらも必要です。
誤解③ Safety-Ⅰは古いから不要
事故分析や再発防止は今後も重要です。
Safety-Ⅰが不要になることはありません。
Safety-ⅠとSafety-Ⅱはどちらを使うべき?
結論はシンプルです。両方使うことが重要です。
Safety-Ⅰの役割
- 事故原因を分析する
- 再発を防ぐ
- 危険要因を取り除く
Safety-Ⅱの役割
- 成功事例を学ぶ
- 現場の工夫を共有する
- 対応力を高める
つまり、Safety-Ⅰ(事故を減らす)とSafety-Ⅱ(うまくいく力を増やす)、この二刀流によって安全性が向上します。
まとめ|安全管理は「防ぐ」と「うまくやる」の両方が必要
Safety-Ⅰは、「なぜ失敗したのか」を分析し、再発を防ぐ考え方です。
これに対し、Safety-Ⅱは「なぜ普段はうまくいっているのか」を分析し、安全を強化する考え方です。
どちらか一方だけでは十分ではありません。
安全とは、事故を防ぐことだけではなく、変化する状況に適応しながら仕事を成功させる力でもあります。
この記事を読んだあとにやること
まずは最近のヒヤリハットや成功事例を一つ思い出してみてください。
そして、
- なぜ失敗したのか(Safety-Ⅰ)
- なぜ事故にならなかったのか(Safety-Ⅱ)
の両方の視点で振り返ってみましょう。
その習慣が、安全文化を育てる第一歩になります。
参考にした考え方・文献
一般論として参考にしたもの
- Erik Hollnagel『Safety Differently』
- 日本ヒューマンファクター研究所『ヒューマンファクター~安全な社会づくりをめざして~』
- 河野龍太郎『ヒューマンエラーを防ぐ知恵』
本記事における筆者の見解
「現場ではこう考える」の内容は、筆者自身が安全管理や航空安全を学ぶ中で得た知見や経験をもとに記載しています。一般論とは区別してお読みください。




