ヒューマンファクター
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環境要因とは|なぜ環境がヒューマンエラーを引き起こすのか

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「気をつけていたのにミスをした」
「本人は真面目なのに、なぜ同じ問題が繰り返されるのか」

現場では、このような場面に出会うことがあります。

前回の記事では、ヒューマンエラーの原因として**人の特性(ヒューマンファクター)**について解説しました。

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しかし、ヒューマンエラーは人の問題だけで起きるわけではありません。実は、人を取り巻く環境が大きく影響しているケースが少なくありません。

この記事では、なぜ環境がヒューマンエラーを引き起こすのかを、現場の具体例を交えながらわかりやすく解説します。

こういう人に向いている記事です

この記事は次のような人に向いています。

  • ヒューマンエラーの原因を深く理解したい人
  • 「注意不足」で終わらない安全管理を学びたい人
  • 現場改善や再発防止を担当している人
  • 新人教育・安全教育をしている人
  • チームや組織の安全文化に関心がある人

環境要因とは何か

環境要因とは、人の行動や判断に影響を与える周囲の条件や状況のことです。

たとえば次のようなものがあります。

  • 作業環境(明るさ・騒音・暑さ寒さ)
  • 作業手順やルール
  • 周囲の人との関係性
  • 組織の雰囲気
  • 時間的余裕
  • 情報の伝わり方

つまり、「人の能力」ではなく「人が置かれた状況」に着目する考え方です。

現場ではこう考える|「なぜミスした?」より「なぜミスしやすかった?」

事故やミスが起きると、「なぜ本人がミスしたのか」に注目しがちです。

しかし現場では、「なぜミスしやすい条件がそろっていたのか?」を考える方が再発防止につながります。

例えば、

  • 疲労
  • 焦り
  • 不十分な情報共有
  • 作業しにくい環境

が重なると、普段なら防げるミスも起きやすくなります。つまり、安全管理で重要なのは、人を責めるより、条件を見直すことです。

なぜ環境要因が重要なのか

ヒューマンエラーは、「本人の不注意」と見られがちです。しかし実際には、環境によってミスが起きやすくなっていることが少なくありません。

現場の具体例

例えば次のような状況です。

例①:時間に追われて確認不足

出動前や作業期限が迫っている状況では、「早く終わらせないと」という心理が働きます。

すると、

  • 確認の省略
  • 思い込みによる判断
  • ダブルチェックの省略

が起きやすくなります。

例②:騒音で重要情報を聞き逃す

周囲が騒がしい環境では、

  • 指示が聞き取りづらい
  • 情報共有が不十分になる
  • 認識のズレが生じる

といった問題が起こります。本人の能力ではなく、環境条件がエラーを誘発している状態です。

例③:わかりにくい手順書

手順が複雑だったり曖昧だったりすると、「たぶんこうだろう」という自己判断が増えます。結果として、作業のばらつきや見落としにつながります。

主な環境要因

ここでは代表的な環境要因を紹介します。

1. 作業環境(明るさ・音・温度など)

作業場所の状態は、人の判断力や注意力に大きく影響します。

具体例

  • 暗い → 表示や数値を見落としやすい
  • 騒がしい → 集中力が低下する
  • 暑い・寒い → 判断力や集中力が落ちる

これによって、疲労やストレスも増えやすくなります。

よくある誤解

「慣れているから大丈夫」

慣れていても、人の認知能力には限界があります。環境が悪化すれば、ベテランでもミスは増えます。

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2. 時間的プレッシャー

時間に余裕がないと、人は「安全」より「効率」を優先しやすくなります。

現場の具体例

  • 急いで確認を飛ばす
  • 焦って早合点する
  • 作業終了を優先する

これは多くの現場で見られる典型例です。

現場ではこう考える

現場経験上、「急げ」が続く現場ほど近道行動が増える傾向があります。

だからこそ、「急ぐ状況でも確認できる仕組み」が必要です。

例えば、

  • 一時停止ポイント
  • 必須読み合わせ
  • チェックリスト

などです。

よくある誤解

「プレッシャーがある方が集中できる」

短期的には集中力が上がることもあります。しかし過度なプレッシャーは、判断ミスや見落としを増やします。

3. 手順・ルールの問題

手順やルールが曖昧だと、自己判断が増えます。

具体例

  • 手順書が読みにくい
  • 更新されていない
  • 人によってやり方が違う

この状態では、再現性のある安全は作れません。

よくある誤解

「手順があるから安全」

実際には、使える手順(合理的)であるかが重要です。複雑すぎるルールは守られにくくなり、結果として省略行動を取るきっかけとなってしまいます。

4. コミュニケーション

情報共有不足も大きな環境要因です。さらに、事故調査でもよくコミュニケーションによるエラーを目にします。

現場の具体例

  • 引き継ぎ不足
  • 指示の意味の解釈違い
  • 「言ったつもり」「聞いたつもり」

特に忙しい現場ほど増えます。

現場視点のひと言

実務では、「ちゃんと言った」が事故後によく出ます。しかし、伝えた ≠ 伝わったです。復唱や確認文化が重要になります。

※ここは筆者の考えですが、航空事故や医療事故では、よく事故要因の一つとして、コミュニケーションの問題が出ています。ですが、コミュニケーションについて、深く考えている人は少ないと思います。よく、再発防止策を考えていく中で、マニュアルや物に対する整備は考えやすいですが、コミュニケーションへの対策は難しいです。人は「聞きたいものを聞く」特性があるため、「聞きたいものに聞かせない工夫」が必要になります。

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5. 組織・チームの雰囲気(安全文化)

職場の雰囲気も重要な環境要因です。

現場の具体例

  • ミスを言い出しにくい
  • 質問すると怒られる
  • ヒヤリハット報告がしづらい

こうした環境では、小さな異常が隠れ、大きな事故につながります。

現場ではこう考える

安全な組織では、「言いやすさ」が確保されています。

これは航空や医療分野でも重要視される**安全文化(Safety Culture)**の考え方です。

筆者の仕事場でも、「声を上げる文化」を重要視しており、声をあげた人の意見を尊重し、たとえ間違いであっても責めることはなく、解決(再発防止)に導くことを大切にしています。

ヒューマンファクターとの関係

前回解説した**ヒューマンファクター(人の特性)**と、環境要因は切り離せません。

例えば、

  • 疲れている(人) × 忙しい(環境)
  • 慣れている(人) × 単調な作業(環境)
  • 焦り(人) × 時間不足(環境)

このように、人 × 環境が重なることでエラーは起きやすくなります。

これは心理学者クルト・レヴィンの有名な式、B = f(P, E)(Behavior=Person × Environment)

という考え方に基づいています。

※レヴィン理論では「行動は人と環境の相互作用で決まる」とされます。

まず最初にやること|最近のミスを“環境”から見直す

この記事を読んだら、最近のヒヤリハットやミスを1件思い出してください。

そして、「どんな環境条件があったか?」を考えてみましょう。

例えば、

  • 忙しかった
  • 暑かった
  • 情報共有不足だった
  • 疲れていた
  • 質問しづらかった

という視点です。すると、「本人が悪い」で終わっていた問題に、新しい改善点が見えてきます。

まとめ|ヒューマンエラーは環境で増える

ヒューマンエラーは、人だけの問題ではありません。環境によって、誰でもミスしやすくなります。

代表的な環境要因として、

  • 作業環境
  • 時間的プレッシャー
  • 手順やルール
  • コミュニケーション
  • 組織の雰囲気

があります。重要なのは、「誰が悪いか」ではなく「何が起きやすくしていたか」を考えることです。

この記事を読んだあとにやること

次の3つを試してください。

  1. 最近のヒヤリハットを1件思い出す
  2. 環境要因を書き出す
  3. 「人への注意」以外の対策を1つ考える

次の記事

ここまでで、

  • 人の特性(ヒューマンファクター)
  • 環境要因

について解説しました。では、具体的にどうすればヒューマンエラーを防げるのでしょうか?

次の記事では、「ヒューマンエラーを防ぐ具体的な対策」について解説します。

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参考にした考え方・文献

  • 河野龍太郎『ヒューマンエラーを防ぐ知恵』
  • James Reason『Human Error』
  • Kurt Lewin(クルト・レヴィン)による行動理論「B=f(P,E)」
  • ICAO Safety Management Manual(SMS)

※「現場ではこう考える」「現場視点のひと言」は、筆者の実務経験で得た知見を含む見解です。一般論とは区別して記載しています。

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ABOUT ME
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高リスク環境下における安全管理やヒューマンファクターに関する知見をもとに執筆しています。
高い安全性が求められる現場での実務経験をもとに、「ヒューマンエラー」や「事故の仕組み」をわかりやすく解説しています。 海上自衛隊にて回転翼機の運航に10年以上従事し、現在は民間にて防災ヘリ操縦士として救助活動等に携わっています。 これまで多くの事例や事故に触れる中で、「そもそも安全とは何か」という問いに強い関心を持つようになりました。 現場では、人のミスを個人の問題として扱うのではなく、 「なぜそのミスが起きたのか」 「どうすれば防げるのか」 という視点で、安全対策や再発防止に向き合ってきました。 このブログでは、そうした現場経験と学びをもとに、日常生活や仕事の中で役立つミスを防ぐための知識と安全の考え方を発信しています。
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