ヒューマンエラー

ヒューマンエラーとは|原因ではなく“結果”である理由と防ぎ方

ヒューマンエラー
Kaito.Safety

まず始めに、「ヒューマンエラー」という言葉を、ニュースや仕事の中で見聞きする機会は多いのではないでしょうか。事故やトラブルの多くは、最終的に「人のミス」として現れます。

しかし現場では、「注意不足だった」、「確認が甘かった」といった言葉で片付けられてしまうことも少なくありません。

ですが、本当にそれで再発は防げるのでしょうか。

この記事では、ヒューマンエラーの定義だけでなく、

  • なぜ起きるのか
  • 現場で何を見るべきか
  • どう対策するのか

まで踏み込んで解説します。

ヒューマンエラーとは何か

まず、ヒューマンエラーはさまざまに定義されていますが、共通点をまとめると次の通りです。

  • 人間の行為である
  • 許容範囲から外れている
  • 偶然ではない

つまり、「許容された範囲から外れた人の行動」と表現できます。

そして、ここで重要なのはヒューマンエラーは「原因」ではなく「結果」であるという点です。

【根拠】河野龍太郎氏の考え方

安全推進研究所 代表取締役所長である河野龍太郎氏の著書『ヒューマンエラーを防ぐ技術』では、ヒューマンエラーを次のように説明しています。

「ヒューマンエラーは、人間の本来持っている特性が、人間を取り巻く広義の環境とうまく合致していないために、結果として誘発されたものである」

ここで重要なのが「広義の環境」です。

環境とは単なる雰囲気ではなく、例えば以下を含みます。

  • 計器や表示(見え方・配置)
  • 天候などの外的条件
  • チェックリストやマニュアル
  • 機体や装置などのハードウェア
  • 作業手順やルール
  • 時間的プレッシャーや業務量

つまり、人は環境の中で行動を選ばされているとも言えます。

この視点に立つと、ヒューマンエラーの見方は大きく変わります。

例えば、

  • チェック漏れ → 注意不足ではなく「手順設計の問題」
  • 見間違い → 不注意ではなく「表示設計の問題」
  • 判断ミス → 能力不足ではなく「情報の与え方の問題」

となります。

つまり、エラーは「人が起こした」のではなく、「起こるべくして起きた」とも捉えることができます。

航空の具体例(専門性の視点)

例えば飛行の場面で考えると、

  • 計器配置が紛らわしい
  • チェックリストが長く、重要項目が埋もれている
  • 天候悪化で認知負荷が高い
  • マニュアルが実運用と乖離している

このような状況では、正しく行動し続ける方がむしろ難しい状態になります。

ここで起きたミスを「不注意」とするだけでは、再発防止にはつながりません。

したがって現場では、「人がどうミスしたか」ではなく「なぜその行動が自然に選ばれたのか」を見ていく必要があります。

なぜヒューマンエラーが起きるのか

人の行動は、心理学者レヴィンのモデルで次のように表されます。

B = f(P, E)

  • B:行動(Behavior)
  • P:人(Person)
  • E:環境(Environment)
  • f :関数

これは、行動は「人」と「環境」の組み合わせで決まる、という意味です。

つまり、ヒューマンエラーとは人と環境がうまく噛み合わなかった結果です。

現場で起きているヒューマンエラーの具体例

ケース①:確認ミス

  • 作業者:経験豊富
  • 状況:時間に追われている
  • 環境:チェックリストが形骸化

→ 結果:確認を「やったつもり」でスキップ

これは単なる不注意ではなく、時間圧力 × 慣れ × 不十分な仕組みによって起きています。

ケース②:思い込みによるミス

  • 作業者:同じ作業を繰り返している
  • 状況:いつも通りだと認識
  • 環境:表示が紛らわしい

→ 結果:誤った対象に操作

これは、経験がリスクに転じた例です。

航空現場での例

例えば飛行の現場では、

  • 計器配置が紛らわしい(見ずらい)
  • 悪天候で認知負荷が高い
  • マニュアルが実運用と乖離している

といった状況があります。

このような環境では、正しく行動し続ける方が難しい状態になります。

実際の航空現場でも、ヒューマンエラーは個人の問題ではなく、
環境との関係性の中で分析されます。

現場での観察ポイント

ヒューマンエラーを防ぐには、「人」ではなく「状況」を見ることが重要です。

具体的には次の視点で観察します。

① 時間的余裕

  • 作業は急かされていないか
  • 同時作業になっていないか

② 情報の見え方

  • 表示は分かりやすいか
  • 見間違いやすくないか

③ 手順の現実性

  • 実際の作業と合っているか
  • 省略されやすくないか

④ 人の状態

  • 疲労
  • 焦り
  • 慣れ(過信)

改善策(実務で使える考え方)

対策の基本はシンプルです。

👉 人に頑張らせるのではなく、仕組みを変えるです。

①:ミスしにくい設計

  • 色や形で区別する
  • 物理的に間違えられない構造(ポカヨケ)

②:確認を行動にする

  • 指差呼称
  • ダブルチェックの役割分担

③:時間圧力を減らす

  • 作業時間の見直し
  • 繁忙時の体制強化

④:エラー前提で考える

  • 人は必ずミスする
  • ミスしても事故にならない設計にする

これは航空や医療でも共通する考え方です。

まとめ

ヒューマンエラーとは、

  • 許容範囲から外れた人の行動であり
  • 原因ではなく結果である

そして本質は、人と環境のミスマッチです。

よって重要なのは、人を責めることではなく、なぜその行動が自然に選ばれたのかを考えることです。

そしてその背景には、

  • 人の特性(注意力・思い込み・疲労など)
  • 環境(忙しさ・手順・周囲の状況など)

が関係しています。

あわせて読みたい
人間の身体的特性と安全の関係|ヒューマンファクター
人間の身体的特性と安全の関係|ヒューマンファクター
あわせて読みたい
認知的特性とヒューマンエラーの関係|ヒューマンファクター
認知的特性とヒューマンエラーの関係|ヒューマンファクター
あわせて読みたい
集団的特性で起きるヒューマンエラー|ヒューマンファクター
集団的特性で起きるヒューマンエラー|ヒューマンファクター
あわせて読みたい
環境要因とは|なぜ環境がヒューマンエラーを引き起こすのか
環境要因とは|なぜ環境がヒューマンエラーを引き起こすのか

本ブログでは、ヒューマンファクターの他にも、Safety-ⅠとSafety-Ⅱといった新しい安全の考え方や、エラーや事故が生起した場合の分析から対策の出し方まで解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

あわせて読みたい
SafetyⅠとSafetyⅡの違いとは?安全の考え方をわかりやすく解説
SafetyⅠとSafetyⅡの違いとは?安全の考え方をわかりやすく解説
あわせて読みたい
VTA分析とは|事故の流れを見える化する方法
VTA分析とは|事故の流れを見える化する方法
あわせて読みたい
m-SHELLモデルとは|原因を対策につなげる考え方
m-SHELLモデルとは|原因を対策につなげる考え方
ABOUT ME
Kaito.Safety
Kaito.Safety
高リスク環境下における安全管理やヒューマンファクターに関する知見をもとに執筆しています。
高い安全性が求められる現場での実務経験をもとに、「ヒューマンエラー」や「事故の仕組み」をわかりやすく解説しています。 海上自衛隊にて回転翼機の運航に10年以上従事し、現在は民間にて防災ヘリ操縦士として救助活動等に携わっています。 これまで多くの事例や事故に触れる中で、「そもそも安全とは何か」という問いに強い関心を持つようになりました。 現場では、人のミスを個人の問題として扱うのではなく、 「なぜそのミスが起きたのか」 「どうすれば防げるのか」 という視点で、安全対策や再発防止に向き合ってきました。 このブログでは、そうした現場経験と学びをもとに、日常生活や仕事の中で役立つミスを防ぐための知識と安全の考え方を発信しています。
記事URLをコピーしました