スイスチーズモデルとは|事故が起きる仕組みを理解する
今回は、以前の記事で少し触れたスイスチーズモデルについて解説していきます。
まず始めに、事故はたった一つのミスで起きると思いますか?
実は、現場で起きる多くの事故は、一つの失敗だけで説明できるほど単純ではありません。なぜなら、小さなズレや見落としが重なり、それが連鎖した結果として事故に至るケースがほとんどだからです。
結論から言うと、この「事故の起き方」をわかりやすく説明したのが、スイスチーズモデルです。
この記事では、
- スイスチーズモデルの基本
- なぜ事故は連鎖するのか
- 現場で何を見るべきか
- 実務でどう活かすか
これらについて、具体例を交えて解説していきます。
スイスチーズモデルとは
まず、スイスチーズモデルとは、英国の心理学者**ジェームズ・リーズン(James Reason)**が提唱した事故モデルです。
このモデルでは、事故は次のように考えられます。
👉 事故は単独で発生するのではなく、複数の要因が連鎖して発生する
図解イメージ

次に、図のようにスイスチーズを横から見た状態を想像してください。
- チーズのスライス=防護壁(安全対策)
- チーズの穴=弱点(エラー・不備)
通常は、防護壁があるため事故は防がれます。
しかし、複数の穴が一直線に並んだとき、事故はその隙間をすり抜けて発生します。
防護壁とは何か
そして、ここでいう「防護壁」とは、単なる装置ではではなく、現場に存在するあらゆる安全対策を指します。
例えば、
- マニュアル・手順書
- チェックリスト
- 教育・訓練
- 機器やシステム
- 監督・ダブルチェック
- 組織のルールや文化
つまり、安全は“多層構造”で守られている、ということです。
事故はなぜ連鎖するのか
重要なのは、事故は「一人のミス」ではなく「仕組みの問題」として起きることが多いという視点です。
そこで、リーズンは事故の背景には潜在的要因があり、顕在的エラーが引き金となり、事故に繋がっていくとしています。
① 顕在的エラー
現場で直接発生するミス
例:操作ミス、確認漏れ
② 潜在的要因
組織の中に潜む見えにくい問題
例:
- 無理なスケジュール
- 不十分な教育
- 形骸化したルール
- 設計の不備
多くの場合、事故はこの潜在的要因が積み重なった結果として起きます。
実際の事故に見るスイスチーズモデル
このモデルの正しさは、多くの事故で確認されています。
例えば航空分野では、**テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故(1977年)**が典型例です。
この事故では、
- 濃霧による視界不良
- 空港の混雑
- 無線交信の誤解
- 標準手順の逸脱
- 権威勾配(機長への遠慮)
といった複数の要因が重なり、一本の“穴の連なり”が形成されてしまっていました。
その結果、大事故に至っています。
これはまさに、不運の連鎖ではなく、構造的な連鎖です。
ヒューマンエラーとの関係
スイスチーズモデルは、前回のテーマとも深く関係します。
なぜなら、ヒューマンエラーは単体では事故になりません。防護壁が機能していれば止められるからです。
つまり、エラーが起きたことよりも、なぜ止められなかったのかが本質になります。
現場での観察ポイント
まず、このモデルを現場で活かすには、「穴」を見つける視点が必要です。
① 防護壁は本当に機能しているか
- チェックリストが形だけになっていないか
- ダブルチェックが実質一人作業になっていないか
② 穴はどこにあるか
- よく省略される手順はないか
- ミスしやすい箇所が放置されていないか
③ 潜在的要因はないか
- 無理な業務量になっていないか
- 教育や訓練は十分か
- 現場とルールにズレはないか
④ 穴が並ぶ条件は何か
- 繁忙期
- 悪天候
- 人員不足
👉 「いつ危ないか」を把握することが重要です
実務での改善ポイント
そして、スイスチーズモデルを活かすためには、単に防護壁を増やすだけでは不十分です。
①:穴を作らない
- 手順の簡素化・明確化
- 設計の見直し
②:穴を見つける
- ヒヤリ・ハットの収集
- 定期的な振り返り
③:穴が並ばない仕組みを作る
- 作業の分散
- クロスチェックの強化
④:柔軟に対応できる組織にする
ここが非常に重要です。
👉 すべてのリスクは排除できない
だからこそ、
- 状況に応じた判断
- チームでの補完
- 異常に気づける文化
が必要になります。

まとめ
スイスチーズモデルとは、
- 事故は単独ではなく連鎖で起きる
- 安全は多層の防護で守られている
- その隙間をすり抜けたとき事故になる
という考え方です。
そして重要なのは、事故は個人ではなく構造で起きることが多いという視点です。
さらに、みなさんが普段特に意識しないで実施している業務や通勤、生活等で「上手くいかなくなる条件(穴を探す)」について考えてみてください。まずはそれを認識するところから始めましょう。
最後に、これまでの投稿した記事でも普段から使える安全の知識がたくさんあるので、読んでもらえたら嬉しいです。




※参考図書
- ジェームズ リーズン(著) 『ヒューマンエラー』
- 河野龍太郎(著) 『ヒューマンエラーを防ぐ技術』
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