なぜ人はルールを守れないのか?ヒューマンエラーの本質を解説

なぜ人はルールを守れないのか
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今までに、ルールを守れない/守らない人を見たことはありませんか?

現場ではよく、

  • 「ルールを守れ」
  • 「決められた手順を徹底しろ」

と言われます。

しかし実際には、ルールを知っているのに守れないという場面が多く存在します。

ではなぜ、人はルールを守れないのでしょうか。

それは単に「意識が低い」「気が緩んでいる」といった問題ではありません。

👉 人間の特性(ヒューマンファクター)そのものが関係しています。

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この記事では、

👉 なぜルールが守れなくなるのか
👉 その背景にある人間の特性

これらについて、現場の視点でわかりやすく解説します。

⭐ ルール違反は「意図的」ではない

まず最も重要なことです。

それは、多くのルール逸脱は“わざと”ではないという視点を持つことです。

現場で起きている多くの問題は、

  • 知らなかった
  • 忘れていた
  • 時間がなかった
  • つい省略した

といったものです。

つまり、「守らない」のではなく「守れない」というのが実態です。

⭐ ルールを守れなくなる主な原因

ここからは、具体的な原因を見ていきます。

① 近道行動(Shortcut Action)

これは、「早く終わらせたい」という心理が、人にはあるということです。

  • 手順を省略する
  • 慣れている作業を簡略化する

なぜ起きるのか

  • 時間的プレッシャー
  • 効率を優先する意識
  • 「これくらい大丈夫」という経験

つまり、人は合理的だと判断したことをやってしまう生き物なのです。

👉 効率と安全のトレードオフ

② 省略行動(Omission Action)

人は慣れてくると、「確認しなくても大丈夫」という判断をしてしまいがちです。

  • ダブルチェックをしない
  • 手順の一部を飛ばす

なぜ起きるのか

  • 過去に問題がなかった
  • 手順が面倒
  • 習慣化による無意識化

例えば、交通事故もそうですが、様々な事故での当事者は、新人よりも中堅~ベテランが多いのもこのせいだと思っています。

👉 慣れがエラーを生む

③ 不注意(Inattention)

人間の注意力には限界があります。

  • 見落とし
  • 聞き間違い
  • 操作ミス

なぜ起きるのか

  • 疲労
  • 集中力の低下
  • 同時作業(マルチタスク)

詳しくは、以前投稿した人間の身体的特性の記事で紹介しています。

👉 「気をつける」では防げない領域

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④ 錯覚・思い込み(Illusion / Bias)

人はこじつけ解釈ができてしまうと、疑念を持たずに「こうだろう」と決めつけてしまいます。

  • 見間違い
  • 勝手な解釈
  • 思い込みによる判断

なぜ起きるのか

  • 過去の経験
  • 期待
  • 状況の曖昧さ

「見たいものに見せない、聞きたいものに聞かせない工夫」が必要になります。

👉 脳の仕組みそのもの

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⑤ 集団の影響

一人ではなく「チーム」等の集団で起きる問題です。

  • 上司に逆らえない(権威勾配)
  • 周りに合わせる(同調)
  • 誰かがやるだろう(社会的手抜き)

詳しくは、以前投稿した集団的特性の記事で紹介しています。

👉 環境が行動を変える

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⭐ 本質的な問題

ここが一番大事です。

それは、個人が悪いだけではなく、そもそものルールが人間に合っていない可能性があることであり、どれだけ立派なルールでも、

  • 現場に合っていない
  • 実行が難しい
  • 負担が大きい

そして、これらの場合、ルールは守られなくなる可能性が高いです。

⭐ SafetyⅠとSafetyⅡの視点

この問題は、安全の考え方とも関係しています。

■ SafetyⅠ

👉 ルール違反=悪
👉 守らせることを重視

■ SafetyⅡ

👉 なぜ守れなかったのかを考える
👉 現場に適応したやり方を重視

つまり、「守らせる」から「守れる仕組みへ」に変化させることが大事です。

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⭐ ではどうすればいいのか

対策の方向性はシンプルです。

① ルールを現場に合わせる

  • 実行可能な手順にする
  • 無駄を減らす

② 環境を整える

  • 見やすくする
  • 分かりやすくする
  • ミスしにくい設計にする

③ 人に頼らない

  • チェックリスト
  • 自動化
  • ダブルチェック

人は合理的であることを求める生き物です。そのため、一度決めたルールをそのままにしておくのではなく、現場で不具合はないか、もっといいやり方はないか等、定期的にルールを見直していくことをお勧めします。

👉 「守れる仕組み」を作る

⭐ まとめ

つまり、人がルールを守れないのは、

  • 意識が低いからではなく
  • 能力が低いからでもなく

👉 人間の特性によるものが多いです

そして重要なのは、ルールを守らせるのではなく、守れるようにすることであり、ヒューマンエラー対策の本質です。

最後に、これまで投稿した記事でも、ヒューマンエラー対策の本質について紹介しているので、興味ある方はぜひ見てみてください。

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高リスク環境下における安全管理やヒューマンファクターに関する知見をもとに執筆しています。
高い安全性が求められる現場での実務経験をもとに、「ヒューマンエラー」や「事故の仕組み」をわかりやすく解説しています。 海上自衛隊にて回転翼機の運航に10年以上従事し、現在は民間にて防災ヘリ操縦士として救助活動等に携わっています。 これまで多くの事例や事故に触れる中で、「そもそも安全とは何か」という問いに強い関心を持つようになりました。 現場では、人のミスを個人の問題として扱うのではなく、 「なぜそのミスが起きたのか」 「どうすれば防げるのか」 という視点で、安全対策や再発防止に向き合ってきました。 このブログでは、そうした現場経験と学びをもとに、日常生活や仕事の中で役立つミスを防ぐための知識と安全の考え方を発信しています。
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